平成14年度調査・
旧白滝8・9遺跡・下白滝遺跡

  平成14年度・白滝丸瀬布R450道路工事に伴う調査

  白滝遺跡群の概要

  白滝村は、北海道の屋根と言われる大雪山系の東北山麓にあり、市街地の北西約6kmには国内有数の黒曜石産出地と知られる赤石山がある。

  村内を東西に流れる湧別川とその支流の支湧別川河岸段丘上には、旧石器時代の遺跡が多数所在し、それらは「白滝遺跡群」と総称されている。

 特に赤石山に通ずる八号沢川と湧別川の合流点付近には、白滝13地点遺跡をはじめ服部台、白滝32地点、白滝33地点遺跡など学史的に有名な遺跡が集中している。


  今年度の調査はその史跡白滝遺跡群より湧別川をさらに下り、支湧別川との合流点より下流の地域で行う。

  調査した3ヶ所の遺跡全ては河岸段丘上にあるが、調査地点は大きく2ヶ所に分かれる。

 一方は赤石川南東側の幌加湧別川と湧別川との合流点付近にある旧白滝8・9遺跡、他方はその合流点から更に湧別川を6kmほど下り、丸瀬布町との境界近くに位置する下白滝遺跡である。

  旧白滝8遺跡

  遺跡は、白滝市街から北東へ3,4km、幌加湧別川と湧別川との合流点を約400mさかのぼる幌加湧別川左岸に位置する。緩やかに傾斜する斜面が大部分であるが、幌加湧別川の浸食を受けた急斜面とそれに続く平坦面も一部見られる。

 調査区は全面にわたって後世の耕作や宅地の造成による攪乱を受けているため、包含層は殆ど残存じていないが、斜面とそれに続く平坦面では続縄文時代の包含層が残っている部分があった。

第一層:樽前a降下軽石(Ta−a層)。1793年の樽前山の噴火により降下し             

               バミス。厚さ約60cm堆積し丘陵の最上層として全域を覆っている。

               無遺物層である。

第二層:第一黒色層(TB層)。第一層と第二層の間にある腐食土。若干の      Ta―aバミスを含む。 縄文時代晩期末葉から1973年の間に形成された土層である。 当遺跡では主に続縄文・擦文時代の遺構・遺物が存在する。厚さ約20cm。

第三層:樽前c降下軽石(Ta−c層)。縄文時代晩期末葉(約2,000年前)

               降下したと言われているバミス。丘陵上の平坦面では5cm程斜面では

               20cm程の厚さに堆積している。

第四層:第U黒色層(UB層)。第三層と第五層の間にある腐食土。縄文時代早

            期から晩期末葉間に形成された土層。当遺跡では縄文時代各期の遺物が

               出土しているが、主に縄文時代中期末から後期初頭にかけての遺構・遺

               物が検出された。丘陵上の平坦面では約20cm、斜面では3050cm

               堆積している。

第五層:恵庭a降下軽石層(En−a層)。約15,000年前の恵庭岳の噴火によ

               り降下したバミス。丘陵上の平坦面で約2m堆積し、最上面は風化し厚

               20cm程がローム化している。ローム層の上面では細石刃を伴う石器

               群が出土した。

第六層:茶褐色の火山灰層。支笏火山灰が風化した土壌であると言われている

               が、堆積原因、成因等が不明なため仮称とした。厚さは約80cmあり、

               肉眼では複数の堆積層や明瞭なインボューションが観察できる。

               上面よりエンドスクレイパーを伴う石器群が出土した。

第七層:支笏火砕流堆積物風成2次堆積層。31,00034,000年前に噴出した

               支笏第一テフラに起因する。古砂丘を形成し本丘陵の基盤をなしている。

 

  遺物は主にT層から出土しているが、V層からも2ヶ所のフレイク・チップの集中域が確認されたほか、若干の遺物が出土している。又、風倒木や木痕等に伴う自然の落ち込みから大量の遺物が出土している。

  土器は最も多いものが続縄文時代後北C1式に相当するもの約40点、他に僅かであるが早期と見られるものも出土している。

  石器は同時期と見られる石鏃、削器、両面加工ナイフ及びその制作途中と見られる両面調整石器が多く出土し、他に石核、剥片など、石器制作に関わる遺物も多量に出土している。

   旧白滝9遺跡

  遺跡は、旧白滝8遺跡の幌加湧別川を挟んだ対岸に位置する。幌加湧別川の右岸にある。

  調査区は後世の耕作により著しく攪乱され、包含層は残存していない。遺物は耕作土中からのみ出土し、全て石器類で、定型的なものとしては、若干の石鏃、尖頭器、削器などである。

  遺跡の時期は石器の風化度合いや器種などから縄文時代と考えられるが、土器が出土していないため、詳細は不明である。

 

  下白滝遺跡

  遺跡は、白滝市街の北東約9,5km、村名の由来となった「白滝」の下流500m、湧別川左岸の標高約270mの河岸段丘上である。

 調査区は全体に耕作が行われ、包含層は残存していない。遺物は耕作土中から多く出土したが、風倒木や木痕などの自然攪乱中から出土している。

 土器は47点出土し、縄文時代中期の押型・押引文土器に伴うと見られる無文の土器がやや多く、ほか後・晩期と見られるものが少量ある。

 石器は石鏃、尖頭器、つまみ付きナイフ、削器などの定型的なもののほか、製作途中と見られる調整のある剥片や裂片が多く出土している。



石器の種類

石器の種類

呼 び 方

説    明

石刃

ブレード

縦に細長く、長い方の両辺がかみそりのようにするどい。けものの肉や皮を切る時に使われたり、ほかの石器をつくる原材料になる。

細石刃

マイクロブレード

細長い小さな薄いかみそりの刃のようなかけらで、幅が1cm以下のもの、骨や棒などにみぞをつけたものに、いくつも埋め込んで槍の先に付けて使われた

細石刃核

マイクロブレード・コア

一つの原石から、次から次へと石刃をたくさん取った残りを石刃核という。石刃技法には、湧別技法という優れた技法の白滝型、札滑型のほか、峠下型、蘭越型、忍路子型がある。

彫器

ビュアリン

石器の一端にちいさな「とい」のような刃を付けたもの。荒屋型は彫刻刀のように使った。ホロカ型は肉を切り刻む道具として使われた。

尖頭器

ポイント

木の葉のような形に先をとがらせて、物を突き刺すための道具。

有茎尖頭器

タングドポイント

小型の尖頭器の根本に柄を付けるとび出しの加工がされている。投げ槍として小さな動物をねらった。

石錐

ドリル

尖った小さな三角形の刃をもつ石器。服やテントをつくるため、毛皮に穴をあけるための道具。

掻器

エンドスクレーバー

石刃などの細長い石のかけらの先端や末端に、急角度のまるい刃をつけたもの。動物の皮なめしに使用された。

削器

サイドスクレーバー

石刃や縦長の剥片のふちに細かい加工をし、皮や肉、木などを切ったり、削ったりする道具。

舟底型石器

ボートシェイプトトウール

大きな剥片や、母岩の平らな面を打ちかいて、舟のような形に仕上げた石器。ホロカ型細石刃核の素材となったものと、毛皮のなめしに使った道具もある。

砥石

ウェットストーン

針や骨角器、矢柄、石斧の刃などをみがくためのもの。あらい、やわらかい石でつくられている。